今回は封入対筋炎で初診日が問題になった事例について少し考えてみようと思います。
請求人の主張は封入対筋炎で筋力が低下したため転倒し脳挫傷と診断される。後に封入対筋炎と診断されたことから脳挫傷で診察を受けた日が初診日であるとするものである。
ここで争点となるのは2つあります。1つは脳挫傷で診察した段階では封入対筋炎とは診断されていないのに転倒の原因を封入対筋炎とすることはできるか。
仮にこれが認められるとしても封入対筋炎で転倒し脳挫傷を生じた場合に同一の傷病といえるのかです。
まず第一の点について考えてみます。封入対筋炎を医学的観点から見てみると50歳以降に好発する慢性進行性の筋疾患で例外なく上昇するクレアチンキナーゼの上昇が軽度であるため診断が困難な場合もあり確定診断が遅れることもある。また極めて緩徐に進行することから専門医療機関の受診する時期が遅れがちとなる。
請求人はすでに50歳を超えており転倒のかなり前から脚力の低下、踏ん張りがきかなくなっているのを感じ始めている。そして脳挫傷と診断された半年後初めて筋力低下を医師に訴えたところ専門医療機関を紹介され確定診断を得ている。とすると転倒のかなり前から封入対筋炎は徐々に進行していると見るのが相当である。
では封入対筋炎と脳挫傷は同一の傷病といえるのでしょうか。
ここで「傷病」とは疾病または負傷及びこれらに起因する疾病を総称したものをいいます。
そして「起因する疾病」とは前の疾病または負傷がなかったならば後の疾病が起こらなかったであろうというように前の疾病との間に相当因果関係があると認められる場合をいう。
とすると前の疾病または負傷から負傷が生じた場合は含まれないことになる。
したがって負傷が生じた場合は別個独立の障害ということになる。
本件では封入対筋炎から脳挫傷が生じていることから別個独立の障害ということになる。
以上より脳挫傷で診察を最初に受けた日を初診日とすることはできない。