★「社会保険審査会裁決例から考える障害年金」に新たな情報を含めて記載してあります。
まずギャンブル依存症はICD10では病的賭博として「人格及び行動の障害」の項目に規定されている。そして障害認定基準では人格障害は原則として認定の対象とならない。
ここで人格障害は性格の著しい偏りと定義されます。
とすると自己の意思により回復が可能と考えられます。回復可能ならば障害年金により生活保障し安定させるよりも安定を与えずに回復努力をさせる必要があると考えたのでしょう。
また障害年金は保険料だけでなく税金も投入されている。ならば回復の努力もせずに障害年金を支給することは国民感情を害するだろう。
このように人格障害に障害年金を支給しないのは自己の意思により回復が可能であるからである。
ではギャンブル依存症は自己の意思により回復が可能なのであろうか。
ここで病的賭博(ギャンブル依存症)とは脅迫的な衝動から賭博を繰り返すことで衝動制御の障害の一種と考えられている。
一般にはギャンブルが止められないのは意思が弱いと考えられています。
しかし冷静に考えてください。普通パチンコのお金欲しさに強盗や殺人までするでしょうか。パチンコに熱中するあまり夏車においたわが子を忘れ熱中症で死なせるでしょうか。意志の弱さでここまでやるでしょうか。こんな人はすべてがギャンブルを中心に考えていてギャンブルをするためには違法行為をすることも、人間関係を壊すこともいとわない、そんな精神状態になっているのでしょう。明らかに異常です。単に意志の弱さだけではかたずけられないでしょう。
ギャンブル依存症は病気です。自己の意志だけでは回復することはできず治療が必要です。
ただし多くの人がギャンブルを止められないのは意思の弱さにあると考えているように、実は本人も病気とは考えておらずやめられないのは自分の責任であると考えます。そしてだんだんと孤立して最終的には自殺という選択肢にたどり着くようになります。
そして障害等級に該当するか。この認定が重要です。該当するには労働能力の喪失が必要です。認定するのは初診日1年6カ月後である。また現在の状態であるがこの段階で労働能力喪失が認定できるであろうか。難問です。ギャンブル依存症も精神疾患ですからまずコミュニケーション能力への影響を考えてみるべきです。ギャンブル依存症に共通するのは借金とウソです。
もう一つ考えなければならないのがギャンブル依存症で障害年金を支給することに国民の理解が得られにくいということです。
障害年金は保険料と税金で賄われます。とすると多くの人が困ったときに助け合うものとして、また国家目的の実現のために強制的に集められることから障害年金を支給することに国民の理解は必要です。
ギャンブルは初めはちょっとした退屈しのぎにという軽い気持ちで入ることがほとんどです。まただからといって依存症に陥らない人も多くいます(陥らない人の方が多い)。
しかし期間があるとはいえ競馬・競輪・競艇が行われ、われわれの住む町の中にパチンコ・パチスロが毎日いつでもできるように存在しています。それらを行うことは犯罪ではありません。ただのめり込むことによって自己の意思で抜けられなくなる恐れがあることは周知されているでしょうか。競馬・競輪・競艇などは開催日があり毎日できるわけではないのでよいですがパチンコ・パチスロは毎日身近に存在しています。危険性のあるものにはそれを認識させたうえで慎重に行わせそれでなったのならば自己責任といえるでしょうが、それがなされないまま依存症になったとしても非難できないのではないでしょうか。
難しい問題ではありますがまじめに取り組むべき問題であります。
★あくまで私の私見になります。
★等級判定のガイドラインでは精神障害の依存症で「精神病性障害を示さない急性中毒や明らかな身体依存の見られない者」は認定の対象とはならない。
とするとギャンブル依存症は精神的な依存のため精神病性障害を示さない限り認定の対象とはならないということになります。
ただし、障害認定基準・等級判定ガイドラインは法的正当性はありません。よって、厳格に障害年金の成立要件を検討するべきである。
★「社会保険審査会裁決例から考える障害年金」に新しい情報を記載してありますのでそちらも御覧下さい。