★不服申立て再審査請求社会保険審査会で遺族厚生年金の受給権をめぐって収入要件が争われた事例。
[問題] 請求人が甲死亡の当時年額850万円以上の収入を将来にわたって有すると認められるか。
[論理] 遺族厚生年金の受給権者となるには次の収入要件を満たさなければならない。
① 前年の収入が850万円未満であること
② 前年の所得が655万5千円未満であること
③一時的な所得があるときはこれを除いた後①②に該当すること
④ 近い将来収入が年額850万円未満または所得が655万5千円未満となることが認められること
そして遺族厚生年金の受給要件の有無は保険事故発生時点で判断される。
また「近い将来」とは保険事故発生以降概ね5年以内をいう。
本件では甲死亡時の前年請求人の収入は年額850万円以上、所得は655万5千円以上あった。
しかし甲死亡後、収入、所得ともにこの額以下に低下していることから甲死亡時点で予見できたかである。
甲は会社を経営しており甲死亡により廃業してもおかしくない状態にあったと主張する。
しかし甲と請求人はともに厚生年金の標準報酬額は最高を継続しており、また、甲死亡前に廃業したという事実はない。
とすると甲死亡時点で収入・所得ともに低下すると予見できたとはいえない。
したがって、年額850万円以上の収入を将来にわたって有すると認められる。