今回は右上肢機能障害で障害等級が問題になった事例について少し考えてみようと思います。
右上肢機能障害は分娩時に神経叢が損傷されたことにより生じている末梢神経の弛緩性運動麻痺と認められる。本件では障害認定日請求をしていることから20歳が障害認定日となる。
ここで障害の状態は国民年金法施行令別表で定められ、より具体的な障害認定基準がある。
そして障害の状態は直接診断を行った医師ないし医療機関が診断当時に作成した診断書もしくは医師ないし医療機関が診断を行った当時に作成した診療録等の客観性のあるいわゆる医証の記載に基づいて作成した診断書またはそれに準ずるような証明力の高い資料でなければならない。そして裁定請求において障害認定日における診断書が提出されていない場合は障害の状態を認定することはできない。それと異なる時期の現症にかかる診断書やその他の資料によって障害認定日の障害の状態を推認することは慎重に対応することが要請される。
しかして傷病による障害が不可逆的に増進すること、または時間の経過にもかわらず障害の状態が変化しないことが確立した医学的知見から明らかな場合に限ってはその前後の時期における障害の状態を明らかにする障害状態認定適格資料により認定することは許されないとすることが著しく相当性を欠くこともある。
あらかじめお断りしておきますが日付・年齢・検査数値はすべて白抜きにされていますので推測の上はなしを勧めさせていただきます。
本件では障害認定日(20歳)の障害に状態を表す診断書が提出されています。それ以外に10歳当時に作成された身体障害者手帳の診断書と請求日現在の診断書があります。
障害認定日の診断書はすでにカルテ廃棄のため進呈障害者手帳の診断書を参考に作成されたものです。その理由はすでに身体障害者手帳の診断書を作成当時に症状固定の状態になっていることから変化はないと判断されたためです。
しかしせいきゅうび現在の診断書と比較してみると握力・関節可動域・運動能力及び日常生活動作の障害の程度が明らかに異なっており症状固定とは判断できない。
とするならば障害認定日の診断書は記載の根拠を示すことができず採用されませんでした。
従って障害認定日で障害年金の受給権は発生しませんでした。