今回は統合失調症で障害の状態が判断できるかが問題になった事例について少し考えてみようと思います。
本件では同じカルテを基に裁定請求時に提出された診断書と再審査請求時に提出された診断書の2通がある。この2通は同じカルテを前提に異なる医師が作成している。
裁定請求時に作成された診断書には日常生活能力の判定以下の項目についてカルテは情報量は不十分であるとして何も記載されていない。
これに対し再審査請求時に提出された診断書は詳細に記載されており等級判定ガイドラインの障害等級の目安にあてはめてみると障害等級2級に該当する。
ここで診療録とは患者の状態や治療の経過を記録するもので患者にとってはもちろんであるが医療機関にとっても最重要の書類である。それは医療研究上の資料というだけではなく、適正な治療あるいは処置がなされていたかを判断する場合や、年金の受給に関わる障害の状態を知る必要がある場合には唯一の情報源といえるからである。したがってその時点での患者の状態、治療・処置内容、その効果等を示す必要最低限度の内容を記録することが義務づけられている。
そして同じ診療録を参考にして記載した診断書の内容が異なる場合にはいずれかの診断書に明らかな事実誤認、誤りがあることによりその診断書を排除することが相当と判断すべき事情がない限り他の診断書の内容をもって障害の状態を判断することはできない。
本件においてカルテを基に裁定請求時の診断書を見てみると明らかな事実誤認、誤りがあるとまでは認められない。
とすると内容の異なる診断書のどちらも排除できないことから障害の状態を判断することはできない。
したがって請求は棄却され障害年金は支給されませんでした。