[問題] 障害等級2級を額改定により3級とすることはできるか。
[論理] 1 厚生労働大臣は障害の程度を審査し異なる等級に該当するときは額を改定することができる。
受給権者は障害の程度が増進した時は額改定をすることができる(厚年52条2項・国年34条2項)。よって受給権者は額改定を請求できるのは障害の程度が増進した時に限られる。
したがって受給権者は軽度の等級への額改定をする権利を有しない。
2 審査請求制度は国民の権利救済のための手続きであるから、不服申立ての利益がなければならない。
受給権者にとり年金額が減少することは不利益であることから不服申し立てをする法律上の利益はない。
たとえ社会生活上の不利益があるとしてもそれは額改定を認めないことによる直接の法律効果として受ける不利益ではない。
3 以上より本件再審査請求は不服申立ての利益を書くから不適法である。
[解説] 本裁決例は2級では社会生活上の制約や不利益があることから3級への額改定を求めたものである。
しかし受給権者がする額改定は障害の状態が増進した場合に限られ障害の状態が減退した場合は法は予定していない。
また審査請求制度は不服申立ての利益が必要となるが、本件では額改定をしないことによる直接の法律効果として不利益を受けるわけではない。
仮に本件のような社会生活上の制約や不利益があるならばそれを是正するのが先決となろう。そしてそれでも救済が不可能な問題があるならば立法的な解決を図ることになる。司法的な解決は法律があるのが原則であるが一般原則に立ち戻り救済の可能性を探る必要がある。