[事案] 本件では躁うつ病で3級厚生年金を受給しているものが老齢年金を繰り上げ受給後2級への額改定を行ったものである。
[論理] まず社会保険審査会でも給付の公平を期するために障害認定基準に依拠して判断する。
次に現在の障害の状態は障害認定基準に当てはめれば2級に該当する。しかし厚年52条7項は障害基礎年金の受給権を有しない者には65歳以上のものに額改定を認めない。
そして厚年附則16条の3で老齢基礎年金の受給権者にも額改定を認めない。
本件では繰り上げ請求を請求しているため老齢基礎年金の受給権者に該当する。
したがって2級への額改定は認めない。
[解説] 障害年金は老齢年金が出るまでの生活保障であることから65歳を過ぎれば老齢年金を選択すべきということになる。
そして障害基礎年金は労働能力が失われていると判断されてることから保険料は法定免除となる。法定免除となった場合保険料を納付しなくてもよいが年金額は2分の1である。そうすると老齢年金の額を上げることは難しい。
これに対し障害厚生年金3級は労働能力が残っておりなんとか老齢年金の額を上げることは可能である。
それゆえに障害基礎年金の受給権を有しない者には額改定を認めないのであろう。