障害等級該当性要件

次に障害等級について考えてみます。

 障害等級は国民年金法302項・厚生年金保険法472項が政令に委任し、国民年金法施行令別表・厚生年金保険法施行令別表第12が規定しています。

 障害認定基準は国民年金法・厚生年金保険法からの委任も、国民年金法施行令・厚生年金保険法施行令からの再委任もありません。障害認定基準は法的正当性のない厚生労働省の内部資料なのです。

 そして障害認定基準は障害年金の受給権の発生要件である障害等級要件を定めることから、実質的意味の立法といえます。そのため障害認定基準が国民年金法施行令別表・厚生年金保険法別表第12に反する場合は憲法41条「国会は~国の唯一の立法機関」とする国会中心立法の原則、すなわち国会のみが法律を制定できるとする原則に違反し違憲無効ということになります(憲法981項)。

 そのため障害認定基準は国民年金法施行令別表・厚生年金保険法施行令別表第12よりも具体的な基準なのですが、国民年金法施行令別表・厚生年金保険法施行令別表第12の忠実な解釈である限りにおいて効力を有するという関係にあります。

 また精神の障害にかかる等級判定ガイドラインがでていますが、これは精神障害及び知的障害にかかる認定が障害認定基準に基づき適正に行われることを目的とします。

 それゆえに国民年金法施行令別表・厚生年金保険法施行令別表第12・障害認定基準・等級判定ガイドラインは実質的に同じものであるということができます。

 では国民年金法施行令別表を使って障害の状態をどのように定めているかを考えてみます。国民年金法施行令別表1級を見てください。

 11号から8号までは具体的な障害の状態が記載されています。すなわち1号では「両眼の視力の和が0.04以下のもの」、2号では「両耳の張力レベルが100デシベル以上のもの」「両上肢の機能に著しい障害を有するもの」などなどです。そして9号で「前各号で掲げるもののほか」と記載して「身体の機能の障害または長期にわたる安静を必要とする病状」として1号から8号までとは異なり抽象的な書き方をしています。その後ろに「前各号と同程度以上」として1号から8号までを参考に障害の状態を判断しています。

 すなわち1号から8号まではその規定に該当すれば障害等級に該当する個別具体的規定であり、9号はそこで規定できなかった身体の障害の一般的規定ということができます。

 そして10号が「前各号と同程度以上」として1号から9号までを参考にしていることから精神の障害の一般的規定ということができます。

 ここで身体の障害と精神の障害を別々に規定した趣旨は身体の障害と精神の障害は性質が異なることから精神の障害に従った判断をなすべきであるということである。

 また11号も「前各号と同程度以上」と規定して1号から10号までを参考としていることから重複障害の一般的規定ということができます。

 この解釈手法は国民年金法施行令別表2級でも、厚生年金保険法施行令別表第12でも基本的には同じですので少し考えてみてください。ここでは重ねてお話はいたしません。

 さて、障害認定基準4ページ3認定の方法(2)を見ていただくと障害の程度の認定を、第2の「障害の程度」に定めるところに加え、第3の「障害等級認定基準」に定めるところにより行うとします。

 ここで大まかに障害の状態を示しておくと

1級が、障害から発する症状により労働能力・日常生活能力が失われている状態

2級が、障害から発する症状により労働能力が失われ、日常生活能力が著しく制限されている状態

3級が、障害から発する症状により労働能力が著しく制限されている状態

のことをいいます。

 ここで労働能力とは労働によって利益を生み出し対価を得る能力のことをいいます。

 また日常生活能力とは普通の生活をする能力のことをいいます。

 ちなみに働けるということと、労働能力が失われるとは同じではありません。働いていても2級に認定される方はいらっしゃいます。年金事務所の相談員が「障害等級2級で働ける人を私は見たことがない」と言っていたのを聞いたことがありますが、これはこの相談員が見ていないだけですので気にしないでください。私は2級認定されても働いている方は何人も見ています。

 ではお手持ちの資料の障害認定基準3ページ障害の程度1を見ていただきたい。

 1級では

 

 

と規定されています。これは前段が定義で、後段が例示になっています。

 これは国民年金法施行令別表19号の「前各号と同程度以上」とする1号から8号までを具体化したものなのです。たとえば腎臓に障害のある方が目に障害のある方を参考に障害の状態を考えてもはっきりいって比較のしようがありません。そこで障害の程度がおかれたわけです。もっとも私は個別具体的規定を労働能力・日常生活能力にどの程度の影響を与えるかに引きなおして考えることにしています。

 では精神の障害の方にこの障害の程度1級のこの例示は当てはまると思いますか。「病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむねベット周辺に限られるもの」「家庭内の生活でいえば、活動の範囲はおおむね就床室内に限られるもの」

 この例示は身体機能に障害がなければ当てはまらないと思います。

 たとえばアスペルがー症候群の典型的な症状は①社会性の障害 ②コミュニケーションの障害 ③反復性の行動がありますがこれらの症状で身体的な活動の制限は伴わないと思います。

 この場合には前段で国民年金法施行令別表19号の「日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度」の定義が記載されていますのでこれに当てはめることになります。すなわち、「他人の介助を受けなければほとんど自分の用を弁ずることができない程度」です。

 2級・3級も同じように考えていけます。

 次に資料の中の障害認定基準47ページ(2認定要領の上)を見ていただきますが、こちらは障害等級認定基準で精神の障害の性質に従った記載がなされています。

 そして知的障害は障害認定基準51ページ、発達障害は障害認定基準52ページで詳しく規定されています。これより詳しく規定するのが等級判定ガイドラインです。

 知的障害を見てみると、(1)で定義が書かれ、(2)で各等級を例示し、(3)(4)(5)で障害等級を判断する際の注意事項が書かれています。

 

 発達障害では()で定義が書かれ、(2)(5)(6)で障害等級を判断する際の注意事項が書かれ、(3)で初診日の注意事項が書かれ、(4)で各等級の例示が書かれています。