★不服申立て再審査請求社会保険審査会で内縁の妻が生計維持要件をそうたんに遺族厚生年金を争った事例。
[問題[ 老齢厚生年金の受給権者が死亡した場合、死亡したもの(適格死亡者)の配偶者で当該死亡の当時適格死亡者によって生計を維持していた者には遺族厚生年金が支給される。
適格死亡者によって生計を維持した配偶者とは適格死亡者と生計を同じくしていた配偶者で年額850万円以上の収入、又は、年額655万5千円以上の所得(基準値)を将来にわたって有すると認められる者以外のものとされている。
本件の問題点は請求人が甲の死亡当時同人によって生計を維持したものと認めることができるかどうかである。
[論理] 遺族厚生年金の受給権者にかかる生計維持関係の認定に関して保険者は「生計維持関係等の認定基準及び認定の取り扱い」を定めているが、生計維持認定対象者が死亡した者の配偶者であり住所が死亡者と住民票上異なっている場合に死亡者による生計維持関係が認められるためには次のいずれかに該当する必要がある。
ア 減に住居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにすると認められるとき
イ 単身赴任・就学または病気療養等のやむを得ない事情により住所が住民票上異なっているが、次のような事実が認められその事情が消滅した時は起居を共にし、消費生活上の家計を一つにすると認められるとき
(ア)生活費・療養費等の経済的な援助がおこなわれていること
(イ)定期的に音信・訪問が行われていること
本件において甲と請求人は家庭内別居状態となり、ガンで入院後退院、死亡するまで両名は同居することはなかったことからアには該当しない。
次に甲と請求人との別居は金銭をめぐる争いと認められ、単身赴任・就学・病気療養等とは異なる。
また離婚訴訟は甲が死亡するまで継続していたと認められることから両名の間に別居を解消し、消費生活上の家計を一つにするという意思があったと見ることは困難である。
さらに離婚訴訟中で別居を続けていた甲が請求人の生活に配慮し、継続的な経済的援助をしていたと見ることはできない。
そして両名の間には通常の夫婦間で想定される音信・訪問も途絶えていたといえる。
とするとイにも該当しない。
以上より生計を維持していたものとは認めることはできない。