不服申立て裁決例 未支給(先順位)

★不服申立て再審査請求社会保険審査会で未支給年金の受給権を争った事例。

[問題] 旧法の規定による老齢年金の受給権者が死亡した場合であって未支給分があるときはその者の配偶者・子・父母・孫・祖父母または兄弟姉妹であって生計同一要件を満たすものは自己の名でその未支給分を請求できる。

 そして配偶者には婚姻の届け出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情に合ったものを含む。

    1 Bを亡Aの配偶者と認めることはできるか。

    2 認められない場合亡Aの弟(請求人)は生計同一要件を満たすか。

 

[論理] 1 婚姻制度は一つの社会制度であり社会制度としての婚姻関係について規定した民法の婚姻秩序を前提として婚姻の届け出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情のあるものを厚生年金保険制度の中で婚姻の届け出をした者と同様に取り扱う趣旨である。

 そして事実上婚姻関係と同様の事情にあるものいわゆる内縁関係にあるものが婚姻関係にあるものに準じて一定の法的保護を受けるからには両者の間に夫婦間同様協力扶助義務等があるのは理の当然である。

 とするならば別居の男女は当該別居が一方の疾病その他真にやむを得ない場合でなければ内縁とは認められない。

 また内縁関係も夫婦間に準じた社会制度としてその存在が認められるのであるから近隣関係・親戚関係その他の関係において両者が夫または妻同然に振る舞い周囲も両者を夫または妻同然とみていることが必要である。

 本件においてBと亡Aとの間にこのような関係は認められず配偶者と認めることはできない。

 2 未支給の老齢保険給付の支給請求は遺族のうち死亡したものと生計を同じくし当該保険給付のみ又は当該保険給付とその他の収入を合わせた収入により生計を営んでいたもの若しくは保険給付の裁定請求がその死亡前になされなかったためにそれを受け取ることができず、又は、給付額がその生計をまかなうに十分でないため死亡した者の生計を支えていたものに当該未支給保険給付の支払請求権を付与することにより行うものとする。

 とするならば同居をし世帯を同じくしているものは原則生計同一要件を満たしているとして取り扱うことが適当である。

 一方住民票上世帯を異にし、かつ、起居も共にしていない別居中のものについては当該遺族が配偶者または死亡した者の未成年の子である場合には、当該別居が就学・病気等のやむを得ない事由によるものであり

①生活費・療養費等の経済的な援助が行われていること ②定期的に音信・訪問が行われていること の二つの事実が認められているときに限り生計同一要件を満たす。

 それ以外の遺族については住民票上世帯を異にし、かつ、起居を共にしていない別居中のものについてはその生活費・療養費等生活の基本的部分に要する費用がいずれか一方によって賄われるという特段の事情が存する場合のみ生計同一関係が満たされているとして取り扱うことが適当である。

 本件において亡Aが請求人の生計費・療養費等の基本的部分をまかなったという主張も立証もない。

 したがって生計同一関係がなかったと認めるのが相当である。

[解説] 現在未支給年金の請求権者は配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹及びこれらの人以外の三親等以内の親族で、受給権者の死亡当時受給権者と生計を同じくしていることが必要です。